工事説明会から見る近隣住民との関わり方
2022年8月4日
建築工事の着工前に気をつけなければならないのが、近隣関係住民とのトラブルです。
工事を行うには騒音や振動、工事車両の出入りが不可欠ですが、それらはまた苦情の要因でもあります。
また、工事中だけにとどまらず、日照りや風通し、プライバシー侵害や電波障害など、
建物が完成してからも問題は多岐にわたって発生します。
そこで多くの自治体では条例を制定し、建設主に対して建築計画に関する標識の設置や、
近隣住民への説明会を開催するよう求めています。
今回は東京都の条例をもとに、説明会の実施に関する内容と、近隣住民への説明の重要さについて説明します。
説明義務を負うことになる範囲とは?
ビルやマンションなど中高層建築物を建てる際には、各自治体の条例に従う必要があります。
東京都の『中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例』では、
原則として高さが10mを超える場合には、建築主による『建築計画のお知らせ』の標識を設置し、
都への標識設置届けの提出などが義務付けられています。
高さが10m未満であれば原則中高層建築物とはなりませんが、
自治体によっては条件によって例外的に該当する場合もあるので注意が必要です。
この標識の設置と並んで、建築主の義務として重要なのが近隣関係住民への説明会の開催です。
この“近隣関係住民”とは、計画建築物の敷地境界線から、
高さを2倍した距離の範囲内にある土地・建築物の権利者や居住者を指します。
ただしこの時、電波障害に関しては計画建築物によって影響を著しく受けると認められる者はすべて該当します。
説明会のタイミングや準備
説明会の目的は建築計画や工事の存在を住民に周知することです。
建築物の用途や工期はもちろん、敷地の形態や広さ、付近の建築物に関しても説明します。
また、工事を行うにあたって周辺に及ぼされる影響や工事による危害の防止策など
直接近隣住民に影響が出る部分に関しても説明が必要です。
説明がスムーズに進むよう、事前に建築物の立体図や配置図、
計画概要書や近隣関係図などを資料として配れるように準備すると良いでしょう。
また、説明会は原則として、開催の5日前までに掲示等の方法によって参加者に周知する必要がありますが、
その際にも簡単な計画書を添付しておくと良いでしょう。
説明会の会場は地域の公民館や集会所のほか、貸し会議室やレンタルスペースなども視野に入れ、
早めにおさえておきましょう。時間は週末の夜など、できるだけ多くの人が集まれるような時間帯を選び、
2-3時間程度を想定しておきましょう。
万が一住民から反対を受けたとしても、建築が合法的なものである限りは、
土地の所有者や施主の権利を保護する観点から、工事が中止に追い込まれることはほとんどありません。
ただし、“合法的であるから、問題ない”と押し通してしまうと、
竣工後も禍根を残してしまうこともあります。質問を受ける態度も事前に予行演習しておくと良いでしょう。
粘り強く対話が必要になる場合も考えられますので、
別日に説明会を再度行うなどをして、焦らず着実に進めていくことが重要です。
挨拶まわりでクレームを防ぐ
このような大規模な工事以外にも、もちろん日々工事は行われています。
説明会の義務が無い場合にも、近隣住民に対して予め工事がある旨や迷惑をかけるなどの挨拶をしておくと良いでしょう。
この時に名刺を渡しておけば、何かトラブルが起きた際の連絡先もわかり、
いきなり工事を始められるよりも心構えができるのです。
事前説明を行うことは、未然に苦情を防ぐ効果もあります。
工事をすれば終わりではなく、その後の住民の生活を慮って接することは規模の大小に関わらず重要なポイントです。
工事規模の小さい、短い工期の工事だからと怠らず、住民に対して真摯に説明を行いましょう。
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